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サンプルとして曲が使われているミュージシャンのアルバムを紹介します。(PART23)

  前回紹介したRonnie Fosterは、George Bensonのアルバムに参加していることでも知られています。
 George Bensonは、ジャズギターから始まり、やがてヴォーカリストとしてもアルバムを出しました。
 今回は、まず、ロニー・フォスターも参加しているGeorge BensonのアルバムBreezin'(1976)Weekend in L.A.(1978)を紹介します。
 そして、あともう1枚、ジャズギターが中心だった時代のアルバムWhite Rabbit(1971)も紹介します。

86. Breezin'(1976) – George Benson

 プロデューサーにTommy LiPuma、オーケストラのアレンジにClaus Ogermanを起用して作られたアルバムです。
参加メンバーは、George Bensonがギターとヴォーカル、Jorge Daltoがアコースティックピアノとクラビネット、Ronnie Fosterがエレピとシンセサイザー、Phil Upchurchがギターとベース、Stanley Banksがベース、Harvey Masonがドラムス、Ralph MacDonaldがパーカッションといった構成です。
 収録曲は、全部で6曲。内訳は、インスト曲5曲、ヴォーカル曲1曲の構成です。
 サンプルに使用されたことがある曲は、Breezin’、This Masquerade、Affirmation、Lady、So This Is Love?です。
 実は、このアルバムは、Anker Soundcore space Q45で、本格的に、最初に聴いたアルバムなのですが、こんな音がいいアルバムなのか、とても約50年前に録音されたアルバムとは思えないくらい録音のすばらしさを認識しました。
調べたところ、このアルバムのレコーディング・エンジニアはAl Schmittで、エンジニアとしてはかなりの技術を持っていることで知られている方です。


 それでは、曲紹介に入ります。曲紹介でのポイントは、カバー曲が3曲ありますが、この3曲ともいいカバーであり、この3曲ともにジョージ・ベンソンの代表曲になっています。

1,Breezin’

 この曲は、カバー曲で、オリジナルはハンガリー出身のジャズギタリストGabor SzaboのアルバムHigh Contrast(1971)に収録されている曲で、曲を作ったのはBobby Womackです。(このHigh Contrastというアルバムは、サブスクリプションでも聴けます。)
 ガボール・ザボのオリジナルヴァージョンは、少しソウル風なインストナンバーに仕上がっています。この曲では、ボビー・ウーマックがリズムギターを弾いていて、ガボール・ザボのリードギターとともにフィーチャーされています。またドラムスは、ロック系ドラマーとしては有名なJim Keltner、ベースは、ジョージ・ベンソンのヴァージョンと同じでPhil Upchurchです。R&Bとソウルフィーリングがあふれた演奏になっています。
 一方、ジョージ・ベンソンのBreezin’は、何かさわやかな感じがする楽曲になっています。ギターに関しては、基本的にはオリジナルをあまり崩さずに弾いていますが、ジョージ・ベンソンのスタイルの演奏です。また、ドラムスが、Harvey Masonですので、少しグルーブ感がある演奏にもなっています。そして、オリジナル以上にPhil Upchurchのベースがフィーチャーされています。
 オリジナルをベースに、少しジャズっぽく、どこか海辺のリゾート地を思い起こす雰囲気もある楽曲です。

2. This Masquerade

 この曲もカバーソングで、オリジナルは、Leon RussellのアルバムCarney(1972)に収録されています。
 Leon Russellのオリジナルのほうは、イントロのキーボードがシンフォニー的で独特ですが、曲に入ると、渋いアメリカ南部の音楽を思い浮かばせるようなスローな曲です。
 一方、ジョージ・ベンソンのヴァージョンのほうは、ジョージ・ベンソンのギターとスキャットとピアノから始まり、そのまま、歌に入ります。曲調としてはジャズブルース風で、途中、ジョージ・ベンソンのギターとスキャットの演奏や、Jorge Daltoのピアノソロがあり、なかなか洒落た演奏です。

3. Six to Four

Phil Upchurchが作った曲で、このアルバムで、一番乗りがいい曲です。
何回も聴いてしまう軽快なベースのリフとリズムギターが中心で、後半、ジョージ・ベンソンのノリのいいギターソロが弾きまくっています。
軽快で、理屈抜きで楽しめる曲に仕上がっています。

4. Affirmation

 この曲もカバー曲で、オリジナルは、Jose FelicianoのアルバムJust Wanna Rock ‘n’ Roll(1975)に収録されています。(残念ながら、サブスクリプションでは聞けませんが、輸入盤のCDは購入できます。内容としては、ロックアルバムで、Jose Felicianoのヴォーカルとリードギターとリズムギターの演奏が楽しめます。)
 オリジナルは、スパニッシュギターによるインストナンバーですが、ジョージ・ベンソンのほうは、ジャズ・フュージョンのアレンジによる演奏になっています。
 出だしの、ギターの音色の録音がばっちりで、きれいな音色であり、しゃれた雰囲気を醸し出しています。そして、曲全体でジョージ・ベンソンのギターが歌っているかのような演奏で、これも程よいノリのいいグルーブです。途中で入るロニー・フォスターのエレクトリック・ピアノのソロもまたいいアクセントになっています。
なお、この曲は、ジョージ・ベンソンのライブでは定番の曲です。それだけ、人気のある曲だということです。

5. So This is Love?

 ジョージ・ベンソンが作った曲で、ミディアムテンポのインストナンバー。オクターブ奏法を交えた演奏で、ジョージ・ベンソンのギタースタイルというものがわかる曲でもあります。

6. Lady

 Ronnie Fosterが作った曲です。
 スローテンポの曲で、ストリングスアレンジがいい曲でもあります。メロディーラインをジョージ・ベンソンがギターで弾いています。これも程よいグルーブが心地いい曲です。


 このアルバムBreezin’で、ジョージ・ベンソンは、自分のギタースタイルが完成されたものになったことと、ヴォーカリストとしても可能性も出てきました。
 録音が本当にいいので、私としては、1度はノイズキャンセリングでハイレゾ対応のヘッドホンかイヤホンで聴いてほしいです。そして、いいヘッドホンやイヤホンで聴くことにより、いかにエンジニアのアル・シュミットがいい仕事をしているのかがわかります。

 アル・シュミットが、ジョージ・ベンソンのアルバムでエンジニアをしたのはbreezin'(1976)の他に、In Flight(1977)Livin’ Inside Your Love(1979)ともう1枚ライブアルバムのWeekend In L.A.(1978)です。どのアルバムもいい音なのですが、代表してWeekend In L.A.を取り上げます。

87. Weekend In L.A.(1978) – George Benson

 1978年、アメリカのRoxy Theatreで行われたライブを収録したアルバムです。このアルバムもプロデューサーはTommy LiPumaです。
ジョージ・ベンソンの他のバンドメンバーは、アルバムBreezin’に参加したメンバーによる演奏になっています。
 サンプル使用されたことがある曲は、9曲目のレオン・ラッセルのアルバムWill o’ the Wisp(1976)に収録されている曲のカバーでLady Blueという曲です。
 収録曲は全部で11曲で、インストナンバーが6曲、ヴォーカルナンバーが5曲とほぼ半々です。
 まず、ヴォーカル曲で目立ったのは、2曲目のOn Broadwayと5曲目のGreatest Love of Allです。
 On Broadwayは、The Driftersの1963年のカバー曲で、ジョージ・ベンソンのヴァージョンのほうは10分にも及ぶものとなっています。ライブならではのヴァージョンで、前半のジョージ・ベンソンのヴァーカルで、後半はジョージ・ベンソンがギターを弾きながらスキャットをしたり、さらにロニー・フォスターのシンセソロ、ハービー・メイソンのドラムとラルフ・マクドナルドのパーカッションによるソロあり、聴きどころが満載です。
 Greatest Love of Allのほうは、ジョージ・ベンソンのオリジナルで、もともとは、モハメド・アリの伝記的な映画The Greatest(1997)の挿入歌として作られたものです。この曲では、ヴォーカルに徹していて、しっとりと聴かせます。
 なお、この曲は、オリジナルよりホイットニー・ヒューストンのヴァージョンのほうが有名なのは間違いありません。

 インストナンバーのほうでは、どれもいい演奏なのですが、7曲目のWindsong、8曲目のOde to a Kudu、10曲目のWe All Remember Wesを注目しました。
 Windsongは、カバー曲でNeil larsenのアルバムJungle Fever(1978)に収録されています。(Jungle Feverは、サブスクでも聴けます。いいフュージョンアルバムです。)
 オリジナルは、キーボードソロ中心ですがジョージ・ベンソンのヴァージョンのほうは、当然、ギターソロが中心です。
 Ode to a Kuduは、ジョージ・ベンソンの作ったスローな曲で、オリジナルは自身のアルバムBeyond the Blue Horizon(1971)に収録されています。出だしのギターの独奏が、味があり、洒落た感じがいいです。
 そして、We All Remember Wesは、スティービー・ワンダーの曲で、アップテンポで明るいナンバーです。ジョージ・ベンソンのギターが中心ですが、途中で、ロニー・フォスターのエレピのソロもあり、ある意味定番の流れですが安心して聴けます。

 このライブアルバムも、アル・シュミットがレコーディングエンジニアを担当しているのでおおむね音はいいです。ぜひ、ハイレゾのイヤホンやヘッドホンで聴いてほしいアルバムです。

そして、あともう1枚紹介します。

88. White Rabbit(1971) – George Benson

 1971年にリリースされたアルバム。残念ながら、このアルバムはサブスクリプションに対応していませんのでCDを購入して聴くしかありません。
このアルバムには、スパニッシュギターにJay Berliner、エレクトリックピアノにHerbie Hancock、ベースにRon Carter、ドラムスにBilly Cobham、El Marという曲だけですがアコースティックギターでEarl Klughが参加しています。
 アルバムの全体的なサウンドの特徴としては、Don Sebeskyのオーケストラアレンジにラテンのエッセンスが入って、これらをバックにジョージ・ベンソンがギターを演奏しているというところです。
 ジョージ・ベンソンのギターに関しては、サウンドのイメージを崩さずに、適度にギターソロを弾いている印象です。楽曲の内容重視で、決して弾きまくってないところがポイントです。
 サンプルで使用されたことがある曲は、El Mar、California Dreaming、Theme From Summer Of ’42です。

 この他にも、ヴォーカルを中心としたアルバムの中では代表的なアルバムGive Me The Night(1980)や、East End×YURIの1994年のヒット曲「DA.YO.NE(だよね)」という曲でサンプリングに使われたTurn Your Love Aroundが収録されているベストアルバムThe George Benson Collection(1981)なども代表的なアルバムですので、興味がある方は聴いてみてください。

(まだ、つづく)

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