サンプルとして曲が使われているミュージシャンのアルバムを紹介します。(PART24)
今回は、ジョージ・ベンソンが影響を受けたギタリストでもあるウエス・モンゴメリーのアルバムを取り上げます。ウエス・モンゴメリーは、オクターブ奏法の生みの親としても知られているギタリストで、活動の前期はモダン・ジャスでしたが、後半は、オクターブ奏法を生かしたインストへと変化していきました。
このパート24では、ジョージ・ベンソンのアルバムWhite Rabbitに参加していたハービー・ハンコックやロン・カーターも参加しているウエス・モンゴメリーのアルバムA Day in the Lifeなど4枚のアルバムと、ピックアップとして1枚紹介します。
※オクターブ奏法については、詳しいことはネットで検索して調べてください。私が調べたところでは、基本的には、鳴らしたい音(例えばド)と1弦開けてその次の弦の同じ音(ド)を同時にならす奏法です。
89. A Day in the Life(1967) – Wes Montgomery
1967年にリリースされたこのアルバムは、ウエス・モンゴメリーのオクターブ奏法の音色を中心とし、そこにドン・セベスキーのストリングスのアレンジを大胆に加えたインストアルバムです。アルバムジャケットがタバコの吸い殻なので少し不健康ですが、アルバムタイトルから何となくわかるような気がします。
このアルバムは、ウエス・モンゴメリーの作った1曲以外は、全部カバー曲で構成されていて、カバー曲のヴォーカルの部分をウエス・モンゴメリーがギターで弾いています。
ピアノにハービー・ハンコック、ベースにロン・カーター、ドラムスにグラディ・テイトなども参加していますが、あくまでもウエス・モンゴメリーのギターを立てる演奏に徹しています。それだけ、ウエス・モンゴメリーのギターの音色を中心だということがよくわかります。
サンプルに使用されたことがある曲は、1曲目のA Day in the Lifeの他、Angel、When a Man Loves a Womanなどです。
アルバムタイトルでもあるA Day in the Lifeは、The Beatlesのカバー曲で、The BeatlesのアルバムSgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band(1967)に収録されています。
ビートルズのオリジナル曲であるA Day In the Lifeを聴いた後にウエス・モンゴメリーのカバー曲を聴いてみると、ジャズっぽい曲に聴こえました。オリジナル曲を聴くことでジャズだということがわかりましたが、聴かなければ、イージー・リスニングと解釈するかもしれません。
その他にThe Beatlesのカバー曲がもう1曲あり、それはThe BeatlesのアルバムRevolver(1966)に収録されているEleanor Rigbyという曲です。
こちらのカバーは、インストですが、オリジナルに忠実にカバーされています。
その他に、私が印象的に思った曲は、7曲目のWillow Weep for Meです。この曲は、1932年に作られた曲で多くのアーティストやミュージシャンにカバーされている曲でもあります。ここでは、ロン・カーターのウッド・ベースがいい味を出していて、このアルバムの中では、1番ジャズっぽい曲に仕上がっています。
アルバム全体としても、人によっては、ストリングスが前面に出ているのでイージー・リスニングととらえる人もいますが、私としては、かなり洗練されたジャズに聴こえました。
あくまでも私の考えですが、もしかしたら、オクターブ奏法を生かすには、スローテンポでメロディを弾くことだとウエス・モンゴメリーは考えていたのかもしれません。
90. California Dreaming(1966) – Wes Montgomery
1966年にリリースされたアルバムで、基本的にはインストアルバムですが、A Day in the Lifeと比べるとジャズの要素が残ったアルバムとなっています。
あくまでも、バンドのサウンドが中心で、バンドのサウンドを穴埋めみたいな感じで、ホーンやストリングスが入っています。
アルバムの内容としては、ラテン風な曲もありますが、全体的に洒落たジャズといった感じの演奏です。
主な参加メンバーは、ピアノにハービー・ハンコック、ベースにリチャード・デイビス、ドラムスにグラディ・テイト、パーカッションにレイ・バレットなどです。結構、レイ・バレットのパーカッションがフィーチャーされているのもこのアルバムの特徴の1つです。
サンプルに使用されたことがある曲は5曲目のWithout Youです。
私が印象に残った曲は、2曲目のSun Downです。この曲は、ブルース調の曲で、ハービー・ハンコックがいいピアノソロを弾いています。ピアノソロの後のビッグバンドのホーンセクションの演奏も効果的で、これもまた、この曲を盛り上げています。
リラックスして聞き流しても、いいアルバムに仕上がっています。
上記のアルバムは、基本的にはジャズですが、一般的なインストアルバムともいえる内容です。
次に、本格的なモダンジャスに取り組んでいたころのウエス・モンゴメリーのアルバムを紹介します。
91. The incredible Jazz Guitar of Wes(1960) – Wes Montgomery
1960年にリリースされたアルバムで、ウエス・モンゴメリーの代表作としても知られています。
ギター:ウエス・モンゴメリー
ピアノ:トミー・フラナガン
ベース:パーシー・ヒース
ドラムス:アルバート・ヒース
という4人編成で録音されたアルバムです。
サウンド的には、アップテンポの曲、スローバラード調の曲、ブルース調の曲がバランスよく収録されています。
当然、ウエス・モンゴメリーのギターが中心なのですが、トミー・フラナガンのピアノも、特にバラード調の曲では、なかなかいい演奏をしています。リズムセクションとのバランスもよく、正にモダンジャズです。
このアルバムを聴いて思ったことは、オクターブ奏法というのは、バラードやスローテンポの曲で持ち味が生きるのではないかということです。
サンプルに使用されたことがある曲でもある3曲目のPolka Dots and Moonbeamsは、本当にシックなスローバラードのインストナンバーです。
92. Boss Guitar(1963) – Wes Montgomery
ギター:ウエス・モンゴメリー
オルガン:メルヴィン・ライン
ドラムス:ジミー・コブ
というトリオ編成で録音されたアルバムです。
トリオなので、当然、ウエス・モンゴメリーのギターが中心のジャスアルバムになっています。
全体的にウエス・モンゴメリーが、オクターブ奏法を交えながら、早いテンポの曲からスローなテンポの曲までギターソロをたくさん弾いています。間違いなくウエス・モンゴメリーのギター演奏が楽しめるアルバムです。
オルガンソロもあり、ジミー・コブのドラムソロも何曲かあり、こちらも楽しめます。
サンプルに使用されたことがある曲は、3曲目のDays of Wine and Rosesです。
(まだ、つづく)
Pick UP
ウエス・モンゴメリーのアルバムでサンプルとは関係がないのですが、個人的には、どうしても取り上げたいアルバムが1枚ありますので、ここで紹介します。
●Full House(1962) – Wes Montgomery
1962年にTsuboというジャズクラブでライブ録音されたアルバムです。
個人的にこのFull Houseというアルバムが、私がはじめて聴いたウエス・モンゴメリーのアルバムでもあり、また、私が少しずつジャズを聴き始めたころに聴いたアルバムでもあります。ジャズの演奏のだいご味みたいなものを知ったのもこのアルバムだったと記憶しています。
参加メンバーは、
ギター:ウエス・モンゴメリー
サックス::ジョニー・グリフィン
ピアノ:ウィントン・ケリー
ベース:ポール・チェンバース
ドラムス:ジミー・コブ
です。
サウンド的には、ウエスモンゴメリーのギターが中心ではありますが、5人のミュージシャンがそれぞれ持ち味を出している演奏になっています。
特に、ウエス・モンゴメリーのギターとジョニー・グリフィンのサックスのユニゾンの演奏は聴きものです。
私は、Full Houseというアルバムは、ウエス・モンゴメリーのギターを聴くアルバムというよりは、5人の演奏のアンサンブルを聴くアルバムだと思っています。特に、3曲目のハード・バップの曲であるBlue ‘N’ Boogieは、ウエス・モンゴメリーのギターソロ→ウィントン・ケリーのピアノソロ→ジョニー・グリフィンのサックスソロ→ジミー・コブのドラムソロといった流れでソロを取っていて、それぞれがいいソロ演奏をしています。
ベースのポール・チェンバースは若干地味ですが、ポール・チェンバースらしい安定感あるランニングベースがこのアルバムでも聴けます。
ライブ演奏だから、よりジャズの雰囲気が感じられるアルバムです。名演です。