サンプルとして曲が使われているミュージシャンのアルバムを紹介します。(part1)
1. まえがき
まずは、なぜ、私がサンプルのもとになっているミュージシャンのアルバムを聴こうと思ったか。それは、ネットのニュースで海外のソングライターの方がサンプルに日本のシティーポップの曲を使用したと知ったことからです。シティーポップがここ数年、評判になっていることは知っていましたが、今、人気がある方に取り上げられたことは、ある意味サプライズに感じました。そこから、私はどんな曲がサンプルに使用されているのかが気になりだしたのです。調べてみると様々な音楽ジャンルからサンプルに使用されていることがわかりました。その中から、一般人の視点から、私が、これはと思ったアルバム(洋楽)をいくつかピックアップしました。
2.サンプルとして曲が使用されたアーティストのアルバムを聴いてみた。
1.Feels So Good(1975) – Grover Washington jr.
Grover Washington Jr.のアルバムで1番有名なものはスムース・ジャズというジャンルを確立したWinelightというアルバムですが、Feels So Goodはジャズ・ファンク色が濃いものとなっています。アルバムは全部で5曲なのですが、全曲サンプルに使用されたことがあるようです。この中で、日本人が一番なじめそうな曲はThe Sea LionやFeels So Goodで、ジャズ・ファンク色が濃い曲ですがホーンが出てくるとルパン三世のテーマソングを思い浮かびます。
アルバム全体としては、アレンジがよくできています。アルバムのすべてがジャズ・ファンクというわけではなく、2曲目のMoonstreamsはスムーズジャズとしても聴くことができるゆったりとした曲もあります。
主な参加メンバーは、Bob James Steve Gadd Louis Johnson Eric Gale Ralph MacDonaldなどいいメンバー構成です。
グローバーワシントン・ジュニアのサックスは決してテクニックに走っているわけではありませんので、ジャズファンクと言っても聴きやすい内容になっています。もし、Feels So Goodが気に入ったならば、このアルバムの前に出たMr.Magic(1974)も聴くことをお勧めします。
こちらのアルバムの主な参加メンバーは、Bob James Harvey Mason Eric Gale Ralph MacDonaldなどこちらもいいメンバーです。
Feels So Goodと比べるとファンク色は薄いので、ジャズファンクが苦手な人でも楽しめる内容です。
2. Sound Of a Drum(1976)/The Path(1978) – Ralph MacDonald
Grover Washington Jr.のWinelightに収録されているJust the Two of UsやMr.magic、Feels so goodの共作者でもあるラルフ・マクドナルド(Ralph McDonald)のソロアルバム2つです。Ralph McDonaldはパーカッション奏者でありますのでほとんどの曲でパーカッションが前面に出ています。
まず、アルバムSound of a Drumの内容は、ジャズファンクを土台に、パーカッションを前面に出している感じです。主にサンプルに使われている曲は、Jam on the Grooveで、この曲のパーカッションソロはすばらしいの一言です。
次に、アルバムThe Pathですが、私がおすすめしたい曲は、アルバムタイトルにもなっているThe Pathです。The Pathはパート1からパート3の三部構成で、アフリカの民族音楽や中南米の音楽、ジャズファンクなどが入っていて、全体的にパーカッションを中心に構成されています。とにかく、パーカッションの大作ともいえる曲だと思いますので聴く価値はあります。他にも、The Pathの次に収録されているSmoke Rings and Wineという曲でハーモニカ奏者のトゥーツ・シールマンス(Toots Thielemans)のハーモニカがフィーチャーされていて、いい味を出していますので、こちらもおすすめの曲です。因みに、トゥーツ・シールマンスは、Sound of a Drumでも1曲ハーモニカを披露しています。さらに言いますと、ラルフ・マクドナルドとトゥーツ・シールマンスはBilly JoelのアルバムAn Innocent Man(1983)に収録されているLeave a Tender Moment Aloneという曲でも共演していますので興味がある方は聴いてください。
Ralph MacDonaldの2つのアルバムともに、パーカッションが前に出ていますので、パーカッションという楽器の魅力が十分にわかる内容になっています。パーカッションという楽器類に興味がある方は聴く価値があるアルバムです。
3. Power of Soul(1974) – Idris Muhammad
アイドリス・ムハマッド(Idris Muhammad)に関しては、日本では、多分、あまり知られていないと思います。
Idris Muhammadはドラマーで、一番有名なところでは、ルー・ドナルドソンの1960年後半から1970年あたりのソウル・ジャズの作品でドラムをたたいていることです。
今回紹介するアルバムPower of Soulは全部で4曲収録されています。サンプルとしてよく利用されている曲は、タイトルにもなっているPower of LoveとLoran’s Danceですが、他の2曲もサンプルとして使われたことがあるようです。
参加メンバーは、Grover Washington Jr. Bob James Gary King Joe Beck Ralph MacDonald Randy Beckerです。
Grover Washington Jrのサックスソロは、自身のアルバムよりブローしていますし、Randy BeckerのトランペットソロやJoe Beckのギターも印象に残ります。もちろんBob Jamesのアレンジもよいです。Idris Muhammadのドラムは、基本的に前面には出ず、全体的なリズムを支えています。
このアルバムの一番のこだわりは、ジミ・ヘンドリクス(Jimi Hendrix)のPower of Soulをカバーしていることです。
ジミ・ヘンドリクスのロックナンバーをジャズ風にカバーするというのは、冒険でもありますので、実際にカバーしただけでもすごいことだと私は思いました。個人的には、オリジナルのほうがかっこいいと思いますが、このアルバムのカバーもそれぞれのソロ演奏も力が入ったものになっていていいカバーです。
Idris Muhammadは、この他にもアルバムTurn This Mutha Out(1977)に収録されている数曲がサンプルに使われています。こちらのアルバムは濃いソウルミュージックという感じで、今の音にも近い感じがします。こちらも濃いですがいいアルバムです。
なお、Idris Muhammadの2枚のアルバムは残念ながらサブスクリプションやダウンロードに登録されていませんでした。ですので、もし、聴かれるならば、ユーチューブでアップしている動画を見るか、CDを購入するしかありません。CDは、2枚のアルバムとも日本盤が出ていますが、かなりマイナーなので店頭には置いている確率は0%に近いのでAmazon などで購入するしかありません。2枚のCDの音質はとても良かったので、良い音で聴きたいのであればCDの購入を勧めます。
4. Alligator Bogaloo(1967) – Lou Donaldson
ルー・ドナルドソン(Lou Donaldson)は、ブルーノートで楽曲が一番サンプルに使用されているミュージシャンです。一番サンプルに使われている曲は、アルバムMr.Shing-A-Ling(1967)に収録されているOde To Billie Joe(ビリー・ジョーの歌)ですが、この時期に出たアルバムの中で、完成度が高いAlligator Bogaloo(1967)を紹介します。
サンプルに使われている曲は2曲目のOne Cylinderです。オルガンはロニー・スミス(Lonnie Smith)、ギターはジョージ・ベンソン(George Benson)、ドラムはレオ・モリス(後にアイドリス・ムハマッドに改名)、コルネットはMelvin Lastieです。
アルバムの内容としては、一般的なジャズにソウルミュージックの雰囲気を合わせた内容になっています。シングルカットされて、ジャズとしてはトップ100にチャートインした1曲目のAlligator Bogalooに代表されるように気軽に楽しめるものとなっています。このアルバムでLou Donaldsonのサックスソロが印象的な曲は、ソウルバラード調の6曲目のI Want a Liitle Girlです。様々なパターンで演奏するレオ・モリスのドラムはかっこよく聴こえます。
Lou Donaldsonは、2年後にHot Dog(1969)というアルバムは作ったのですが、このアルバムの収録曲が一番サンプルに使用されています。内容としては、Alligator Bogalooよりもソウルミュージック色が濃くなっていて、参加ミュージシャンもドラムのレオ・モリス以外は変わっています。ジャズに近いソウルジャズがAlligator Bogaloo に対して、ソウルミュージックに近いソウルジャズがHot Dogといった感じです。
つづく