サンプルとして曲が使われているミュージシャンのアルバムを紹介します。(part6)
いろいろと調べてみて、ジョー・サンプルという人は、多くのギタリストと共演してきたことがわかりました。このことから、もしかしたら、ジョー・サンプルは、ギターが好きなのかもしれません。そこで、今回は、ジョー・サンプルが共演した多くのギタリストのアルバムの中から、サンプルに使用されたことがある曲が収録されているアルバムを紹介します。
20. Midnight Believer (1978) – B.B. King
B.B. キングがクルセイダーズをバックに、ボーカルやギターを披露しているアルバムです。
サウンド的にも、クルセイダーズの音楽に、B.B. キングのギターがそのまま加わってできたサウンドに仕上がっています。
クルセイダースの音楽と言ってもどのあたりかと思う人がいるかもしれません。私自身、すべてのクルセイダースのアルバムを聴いているわけではありません。ですので、あえて知っている範囲でいえば、メンバーは違いますが、The 2nd Crusade(1973)というアルバムあたりのサウンドに近いような気がします。ソウルジャズ、ファンキージャズ的なサウンドに、B.B.キングのブルースが加わった感じです。
B.B.キングのギターとボーカルは、クルセイダーズの演奏に違和感なく溶け込んでいます。
このアルバムあたりから、B.B.キングのボーカルやギターは、キャリア的にも円熟期に入ってきたかなという感じです。
サンプルに少しだけですが使用されている曲は、スローバラード調のHold On(I Feel Our Love Is Changing)という曲です。
B.B.キングはキャリアが長いので、いいアルバムは当然、他にもあります。ですので、キャリア的にも、Midnight Believer1枚だけだと、足りない気がしますので、ジョー・サンプルが参加していませんが、もう1枚、サンプルに使用されている曲があるアルバムを紹介します。
21. Completely Well(1969) – B.B. King
1969年に発表されたB.B.Kingのアルバムです。
アルバムの印象としては、スタジオライブ的な感じで、B.B.キングとバックバンドのメンバーが、ブルースナンバーを軽快に演奏しているアルバムです。
B.B.キングのギターも本当に豪快で、もしかしたらこの時期が全盛期かもしれません。ボーカルの関しても迫力があり、これも全盛期のB.B.キングのボーカルの1つだと思います。
このアルバムには2曲のカバー曲がありますが、そのうちの1曲が、サンプルに使用されたことがあるThe Thrill Is Goneという曲です。この曲は、1951年にロイ・ホーキンスにより作られた曲のカバーであり、B.B.Kingのシングルの中で1番ヒットした曲でもあります。
そして、もう1曲のカバー曲は、ブルースのスタンダードナンバーでもあるConfessin’ the Bluesです。オリジナルは、Jay McShannの曲で、1941年に発表されました。この曲は、B.B.キングだけでなく、チャック・ベリー(Rockin’ at the Hops(1960)収録)やローリング・ストーンズ(12×5(1964)収録)などにもカバーされている曲です。B.B.キングのヴァージョンに関しては、まさにキングオフブルースといった演奏になっています。
Completely Wellというアルバムは、ブルースのアルバムながら本当に軽快に聴けるアルバムです。完全に順調です。
22. ‘Round Midnight(1972) – Kenny Burrell
ケニー・バレルのアルバムは、全体的にはサンプルに使用されている曲はあまりないのですが、このアルバムに関していえば、頻度は少ないのですが、サンプルに使用されている曲がありますので取り上げることにしました。
サンプルに使用されたことがある曲は、1曲目のA Streetcar Named Desireです。
3曲目の’Round Midnightだけジョー・サンプルがピアノで、ポール・ハンフリーがドラムスで参加しています。
全体的には、最後の1曲を除いては、ウッド・ベースとドラムとエレピをバックにケニー・バレルがギターを弾くという構成の曲で成り立っています。
このアルバムの特徴としては、やはり、ピアノがエレクトリックピアノだということです。1950年、1960年代のギターを含んだカルテットでは、ピアノがアコースティックピアノが一般的ですが、このアルバムでは、エレクトリックピアノにしたことで静かなで洒落た夜の雰囲気が出ています。ケニー・バレルのギターも味わい深いです。
アルバムの収録曲は全曲カバー曲です。全体的に、当時としては、比較的古いスタンダードナンバーが多い中、わたしが、特に注目したのは、ランディー・ニューマンのI Think It’s Going to Rain Today(Randy Newman(1968)収録)という曲をカバーしたことです。オリジナルは渋い曲(歌詞は、いい歌詞です。)なのですが、ここでは、ジャズのハードバップ調にアレンジし、洒落た演奏になっています。
最後の曲、Blues In the Nightは、ケニー・バレルのギターだけの演奏です。もしかしたら、ケニーバレルの独奏を楽しみにしている人もいるかもしれません。
23. Darkness Darkness(1972) – Phil Upchurch
フィル・アップチャーチが1972年にリリースしたアルバムです。正直、こういったレアな部類に入るアルバムがサブスクリプションで聴けるのはありがたいことです。なお、このアルバムがLPで発売されたときは、2枚組で発売されました。全部聴き終わるのに1時間かかったこともうなずけます。
このアルバムの注目すべき点は、参加メンバーがいいことです。
ベース:チャック・レイニー
ドラムス:ハービー・メイソン
ピアノ:ジョー・サンプル
リズムギター:アーサー・アダムス
コンガ、タンバリン:ボビー・ポーターホール
ホーンアレンジ:ニック・デ・カロ
さらに、ダニー・ハサウェイが2曲参加しています。
ここに、フィル・アップチャーチのリードギターが加わっています。
アルバムの内容としては、有能なミュージシャンをバックにして、フィル・アップチャーチがソロを弾きまくっています。
収録曲はほとんどカバー曲なのですが、どの曲も、フィル・アップチャーチのギターが表現力が多彩で聴いていて面白いです。
以下、私が、印象に残った曲の簡単な感想です。
1曲目のDarkness,Darknessは、The YoungbloodsのアルバムElephant Mountain(1969)(結構いいアルバムです。)に収録されている曲のカバーです。オリジナルをベースにフィル・アップチャーチがソロを弾きまくっています。バックでは、チャック・レイニーのベースがスラップを交えて演奏しているところが聴きどころです。
3曲目のWhat We Call the Bluesでは、エレクトリックピアノの演奏とストリングス&ホーンアレンジをDonny Hathawayが担当しています。ブルーズフィーリングあふれた曲で、ストリングス&ホーンのアレンジも洒落ていていいです。
4曲目のCold Sweatは、James Brownが1967に発表した曲のカバーです。ジャズファンクで、リズムセクションがいい演奏をしていてグルーブがある曲に仕上がっています。チャック・レイニーとハービー・メイソンがいい演奏をしています。
6曲目のInner City Blues(Make Me Wanna Holler)は、Marvin Gayeが1971年に発表したアルバムWhat’s Going On(1971)に収録されている曲のカバーです。ここではフィル・アップチャーチがギターを弾きまくっています。あまり、オリジナルの雰囲気は感じないのですが、いい演奏をしています。なお、この曲で、パーカッションを演奏していBobbi Porterhallは、オリジナルの曲でもパーカッション(bongo)を演奏しています。
この他にも、キャロル・キングのYou’ve Got a Friend(Tapestry(1971)収録)やジェームス・テイラーのFire&Rain(Sweet Baby James(1970)収録)のカバーなどもありますが、どの曲も、当然、フィル・アップチャーチのギターが中心です。
このアルバムで、サンプルに少しだけ使用されたことがある曲は、9曲目のSwing Low,Sweet Chariotという曲です。
この他に、Freddy RobinsonというギタリストのソロアルバムThe Coming Atlantis(1969)というアルバムをとりあげたかったのですが、残念ながら、かなりレアなアルバムで、LPしかありません。つまり、CD化もされていなく、サブスクリプションにもありません。ユーチューブには、アップされてはいますが、やはり、正式に聴きたいところです。
このアルバムには、ジョー・サンプル以外にドラムスでポール・ハンフリーも参加しています。さらっと聴いたのですが、オーソドックスなジャズギターをソウル風に演奏している感じです。オクターブ奏法もあり、もしかしたら、ウエス・モンゴメリーの影響を受けているかもしれません。
このアルバムで、サンプルに使用されたことがある曲は、アルバムタイトルにもなっているThe Coming Atlantisです。
(つづく)