サンプルとして曲が使われているミュージシャンのアルバムを紹介します。(part5)
今回は、ラリー・カールトン在籍時のクルセイダーズのアルバムと、ラリー・カールトン、ウィルトン・フェルダー、ジョー・サンプルの3人がスタジオミュージシャンとして一緒に参加しているアルバムを取り上げます。
15. Southern Comfort(1974) – The Crusaders
ギターのLarry Carltonが正式メンバーになって初めてのスタジオアルバムです。主に、サンプルに使用されている曲は、A Ballad For Joe(Louis)、The Well’s Gone Dryなどです。
アルバムタイトルからアメリカ南部の音楽の雰囲気を感じさせます。前半は、ジャズファンクでありながらも、ソウルミュージックに通じるファンキーさも感じさせるサウンドで、9曲目のWhen There’s Love Around(イントロのラリー・カールトンのギターがかっこいいです。)あたりからメンバーのそれぞれの楽器のインプロビゼージョンがフィーチャーされている演奏になっています。特に、Lilies of the Nile、Whispering Pinesの2曲ではウェイン・ヘンダーソンのトロンボーンのソロと、ラリー・カールトンのソロが印象的です。アルバムの最後の曲A Ballad For Joe(Louis)では、ウィントン・フェルダーが独特なベースラインを弾いています。
前回取り上げたアルバムStreet Lifeと違って、このアルバムではまだトロンボーンのウエイン・ヘンダーソンが在籍していましたので、管楽器が2つあることで、ホーンを生かした曲も何曲かあって聴いていて軽快さも感じます。
このアルバムの前に発表されたライブアルバムScratch(1974)での演奏の勢いをこのアルバムでも詰め込んでいますので、ぜひ機会があれば、ライブアルバム(スクラッチ)も聴いてみてください。
クルセイダースのメンバーの中でも、ラリー・カールトン、ウィントン・フェルダー、ジョー・サンプルの3人はスタジオミュージシャンとしても多くのアルバムに参加しています。そこで、3人が参加しているアルバムの中から、私が、気になったアルバムを3つ紹介します。
16. Diamonds&Rust(1975) – Joan Baez
1975年にリリースされたジョーン・バエズのアルバムです。このアルバムには、ギターのラリー・カールトン、ベースのウィントン・フェルダー、エレクトリックピアノのジョー・サンプルが参加しています。
サンプルに使用されている曲は、1曲目のジョーン・バエズのソングライティングによるDiamond&Rustですが、この曲はサンプルだけでなく、他のミュージシャンにもよくカバーされている曲です。特に、ヘビーメタルファンの間では、Judas Priestが1979年に発売した日本公演のライブアルバム、Unleashed in the Eastでカバーされた曲として有名です。オリジナルの曲は、ジェーダス・プリーストのカバーにある高速バスドラムの連打やエフェクトがかかったエレクトリックギターの音は当然なく、アコースティークギターを中心に仕上げています。
アルバムの内容としては、ジョーン・バエズの作った曲は4曲で、他はボブ・ディラン、ジャクソン・ブラウン、スティービー・ワンダー、オールマン・ブラザーズ・バンド、ジャニス・イアンなどのカバー曲で構成されています。アルバム全体としては、明るく爽やかなフォークロックが中心で、ピアノをバックにバラードを歌う曲もあります。
カバー曲で一番目立つのは、やはり、ボブ・ディランのカバー曲であるSimple Twist of Fateです。原曲とは違い、ラリー・カールトンとディーン・パークスのツインギターをフィーチャーした明るいフォークロックになっています。途中、ボブ・ディランの歌い方をまねるのは、ジョー・バエズだからこそできるものです。
10曲目のDidaは、ボーカルでジョニ・ミッチェルが参加しています。ジョー・サンプルのエレクトリックピアノのソロやラリー・カールトンのギターがあるせいか、何となくクルセイダーズの曲みたいに聴こえます。
17. The Hissing of Summer Laws(1975) – Joni Mitchell
ラリー・カールトン、ウィントン・フェルダー、ジョー・サンプルのスタジオワークで、おそらく代表的なのものは、ジョニ・ミッチェルのCourt and Spark(1974)ですが、このThe Hissing of Summer Lawsというアルバムには、ラリー・カールトンが4曲、ウィルトン・フェルダーが2曲、ジョー・サンプルが2曲と限定的な参加ですが、アルバム全体の出来はなかなかで、サンプルに使用された曲もあることから、こちらを取り上げます。
サンプルで使用されている曲は、3曲目のEdith and the Kingpinという曲です。(なぜかこの曲だけは3人とも参加しています)。
このアルバムを聴いてみて、サウンドのベースがフォークソングであり、フォークを土台に様々なジャンルの音楽(アフリカの民族音楽や、ジャズ、ゴスペル、ロックなど)を取り入れて、独自の世界を築き上げたと思いました。サウンドの中心はジョニ・ミッチェルのアコースティックギター、ピアノとボーカルであり、そこから、いろいろな楽器が入ってきて1つのサウンドが出来上がる。そんな感じがしました。
因みに、このアルバムは、あのプリンスが好んでよく聴いたそうです。
私としては、世間とは違う解釈かもしれませんが、ジョーン・バエズのダイアモンド・アンド・ラストと同じく、フォークソングのアルバムととらえました。私は、このようにとらえたことで、このアルバムの良さがわかったからです。
18. Sleeping Gypsy(1977) – Michael Franks
マイケル・フランクスが1977年に出したアルバムです。このアルバムでは、前作のThe Art of Tea(1976)同様、ほぼ全面的に、ラリー・カールトン、ウィントン・フェルダー、ジョー・サンプルが参加しています。
アルバムを聴いてみて、まず、これは、大人向けのアルバムだなあと思いました。多分、10代、20代の方からすると地味に聴こえるかもしれません。
1曲目のThe Lady Wants to Knowのイントロでのラリー・カールトンのギターがいい味を出しています。この1曲目のThe Lady Wants to Knowがサンプルに使用されている曲です。
アルバム全体としては、ボサノバがベースとなっていて、ゆったりとした流れになっています。
ラリー・カールトンやジョー・サンプルがソロを取っている曲もあり、ウィントン・フェルダーのベースとともにリラックスした演奏も楽しめます。
なお、このアルバムには、Michael BreckerとDavid Sanbornの2人サックス奏者が参加していて、それぞれの持ち味を出したソロを吹いています。
以上、ラリー・カールトン、ウィントン・フェルダー、ジョー・サンプルが、スタジオワークで参加しているアルバムを紹介しました。聴いていて、やはりスタジオミュージシャンの仕事というものは個性を出しにくいところがあると思います。
そこで、ラリー・カールトンやジョー・サンプルのソロアルバムを取り上げたいところですが、ラリー・カールトンはギタリストです。ギタリストのアルバムというのはどちらかというとサンプルに使用されない曲のほうが多いので、やむを得ず取り上げませんが、もし、ラリー・カールトンのギターがたくさん聴きたいのであれば、Larry Carlton(1978),Sleepwalk(1982)あたりのアルバムを聴くことをお勧めします。
ジョー・サンプルのソロアルバムのほうは、サンプルで使用されている曲がありますので、取り上げることにします。
19. Rainbow Seeker(1978) – Joe Sample
ジョー・サンプルのソロアルバムだけに、当然、ジョー・サンプルのピアノが中心のアルバムです。
サンプルに使用されている曲は2曲目のIn All My Wildest Dreamsです。
この曲でギターを弾いているのはDavid T.Walkerです。デビット・T・ウォーカーらしいソウルフィーリングあふれるギターです。
ジョー・サンプルのピアノはエレクトリック・ピアノを使用している曲もありますが、全体的にアコースティック・ピアノが中心になっています。
ホーンを使った曲やストリングスを使った曲、ジョー・サンプルのピアノだけの曲もあります。
ベースがロバート・ポップウェル、ドラムスがスティックス・フーパーで当時のクルセイダーズのメンバーのリズムセクションを採用しています。
ギタリストに関しては、使い分けていて、参加メンバーはDean Parks,David T.Walker,Billy Rogers,Ray Parker Jr. ,Barry Finnertyです。ジョー・サンプルのギターに対するこだわりがうかがえます。
このアルバムは、クルセイダーズのアルバム以上に、アレンジや構成がしっかりしています。サウンド的には、ジョー・サンプルのピアノの音色を生かしたサウンドで、フュージョンとスムースジャズの中間的なものと私は思いました。
(つづく)