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サンプルとして曲が使われているミュージシャンのアルバムを紹介します。(PART11)

 今回、紹介するアルバムは、ベルリン3部作の最初のアルバムでもあるデビッド・ボウイのLowというアルバムになるのですが、このアルバムと、同じ時期に作られたイギー・ポップのアルバムを2枚紹介します。


 (今更ながら、正直なところ、デビッド・ボウイのアルバムは、かなりの記事があると思うので、やりづらいところがあるのですが、ただ、これも一種の学びだと思って書いています)。

44. Low(1977) – David Bowie

 ベルリン3部作の最初の1作目にあたるアルバムです。
 当時は、レコードで発売されていて、1曲目から7曲目がA面で、8曲目から11曲目がB面です。
 ですので、CDやダウンロード、サブスクリプションで聴くと、人によっては、曲順にどこか違和感を感じるかもしれません。
 このアルバムは、ドイツのクラウトロックやアンビエント・ミュージックなどを曲に取り入れて作られています。
 つまり、ロックやソウルといった曲に、クラウトロックやエレクトリック楽器の要素を加えています。
 また、ブライアン・イーノが参加したことで、ロックに芸術性や電子音楽の要素が加わり、独特なロックサウンドになっています。特に 1曲目のSpeed Of Lightは、インストですが、サウンド的には、ブライアン・イーノのソロアルバムAnother Green World(1975)の1曲目のSky Sawにも通じるものとなっています。
 サンプルに使用されたことがある4曲目のSound and Visionは、ボ・ディドリーの影響もうかがえるような曲で、効果的にエレクトリック楽器を使っています。
 3曲目のWhat in the Worldには、イギー・ポップがバックボーカルで参加しています。
 私が、注目した曲は6曲目のBe My Wifeという曲です。この曲のイントロのピアノが、どことなく、50~60年代のロックのピアノの雰囲気です。デビッド・ボウイは、エレクトリックを取り入れつつも、ロックのスタンダードの形も少し残したかったのではと私は思いました。因みにこの曲のピアノを担当しているのは、Roy Youngです。
 このLowのA面のサウンドで特に目立つのが、ドラムのスネアの音で、ハーモナイザーを通して処理したことで音が大きくなっています。
 LowのA面は、1980年代にブームになったニューウエイブという音楽にもつながるものであると私は考えました。

 B面は、タンジェリン・ドリームや、アンビエント・ミュージックなどの影響を受けたinstrumentalの曲がメインになっています。
 10曲目のWeeping Wallは、デビッド・ボウイが全楽器を担当していますが、8曲目のWarszawaと9曲目のArt Decadeはデビッド・ボウイとブライアン・イーノの2人で全楽器を担当し、11曲目のSubterraneansだけはデビッド・ボウイとブライアン・イーノのほか何人かのミュージシャンで演奏しています。
 このB面の4曲に関しては、クラウトロックやアンビエント・ミュージックで、楽器の音色を生かしたインスト曲です。タンジェリン・ドリームほどの強い芸術性はなく、バランスよく仕上がっています。
 このLownというアルバムは、聴いていて、デビッド・ボウイが当時の最先端とされた楽器類を使用して作られたアルバムで、商業的なものは意識しなかったと思われます。ですので、聴く側も、一回でわかるような商業的な視点で作られた音楽とは違いますので、その点に注意して聴くことが大事です。

 Lowというアルバムの前に、デビッド・ボウイは、イギー・ポップのアルバムのThe Idiotというアルバムをプロデュースをしました。
 そこで、簡単ではありますが、デビッド・ボウイがプロデュースに参加したイギー・ポップのアルバムThe Idiotとデビッド・ボウイがLowをリリースした後に作られたLust For Lifeという2枚を紹介します。

45. The Idiot(1977) – Iggy Pop

 1977年にリリースされたアルバムですが、録音はデビッド・ボウイのアルバムLowより先にレコーディングされました。ですので、LowのA面にもサウンドが反映されています。
 内容としては、従来のロックに、クラウトロックを混ぜ合わせた感じのサウンドで、1曲目と10曲目は、特に、クラウトロックの影響を感じます。ただ、よく聴くと、どの曲も、結構、ギターがフィーチャーされていて、曲によっては、1990年代のオルタナティブロックにも通じるところがあります。(あくまでも個人の感想です)。
 サンプルで使用されたことがある曲は2曲目のNightclubbingです。
 デビッド・ボウイのプロデュースによるアルバムですので、スタジオワークで作られた音でありますが、Lowよりもロック色が濃いアルバムなのは間違いないです。
 なお、このアルバムの5曲目に収録されているChina Girlは、デビッド・ボウイも、アルバムLet’s Dance(1983)でカバーしています。デビッドボウイのカバーと比べると、イギー・ポップのほうは、ストレートなロックに仕上がっています。
 私としては、無理があるかもしれませんが、The Idiotは、全体的にもオルタナティブロックととらえてもいいとアルバムと思います。ただ、当時は、オルタナティブロックという言葉はなかった気がするのですが・・・。

46. Lust For Life(1977) – Iggy Pop

 1977年に発表されたアルバムで、前作のThe Idiotと同様、デビッド・ボウイがプロデュースに参加しています。
前作と違って、ライブ感があり、テンポの良いロックに仕上がっています。
 サンプルで使用されたことがある曲は、1曲目のLust For Lifeと4曲目のThe Passengerです。
 1曲目のLust For Lifeは、James Jamersonのベースをを思い浮かばせるようなロックナンバーです。この曲は、のちに映画トレインスポッティングの挿入歌としても取り上げられ、イギー・ポップの代表曲の1つでもあります。
 4曲目のThe Passengerは、このアルバムでリード・ギターを担当しているRicky Gardinerが作曲した曲で、シンプルなギターのリフをバックにイギー・ポップが語り掛けるように歌っているロックナンバーです。これも、人気がある曲です。ちなみに、Ricky Gardinerは、デビッド・ボウイのアルバムLowで何曲かリード・ギターを弾いています。
 前作は、デビッド・ボウイのプロデュースの割合が大きかったですが、このアルバムでは、イギー・ポップのプロデュース色が濃いアルバムなのが特徴です。
 作詞は、全曲イギー・ポップで、作曲は、前作同様、主にデビッド・ボウイなのですが、イギー・ポップも2曲目のSixteenというThe Stoogesを思い起こさせるような曲を作曲していて、ここでも、少しイギー・ポップ色が出ています。
 私の最終的な感想としては、ロックという音楽は、R&Bや、ブルース、ソウルミュージックなどから派生したものだというのが、このアルバムを聴いて改めて実感しました。そして、イギー・ポップの曲は、Iggy &The StoogesのアルバムRawPower(1973)の曲のように、理屈がいらないロックがベースだということも改めて分かりました。

(つづく)


(MEMO)

 Lowのアルバムクレジットをよく見ると、Roy Young(piano)という名前と担当楽器があります。
そこで、サンプルには使用されたことがない曲ですが、 MEMOとしてRoy Young のシングルのB面の曲を紹介したいと思います。


●I’m A Loner(1973)(シングルのB面) – Roy Young

 ロイ・ヤングのアルバムは入手困難なものがほとんどで、サブスクリプションも当然ありません。いろいろと調べた結果、ユーチューブにこの曲(シングルのB面)がアップロードされていました。
 実際に聴いてみると、ヘビーなブルース調のロックな曲で、とてもB面の曲とは思えないくらいの曲でした。
 もし、機会があればユーチューブで聴いてみてください。

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