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サンプルとして曲が使われているミュージシャンのアルバムを紹介します。(PART 12)

 デビッド・ボウイは、イギー・ポップのアルバムLust For Lifeのレコーディングを終えた後、アルバム”Heros”のレコーディングを開始し、完成させリリースします。
 今回は、まず、デビッド・ボウイのアルバム”Heros”を取り上げます。その後に、タンジェリン・ドリームとクラフトワークの簡単なアルバム紹介を挟み、アルバムScary Monsters(and Super Creeps)を取り上げます。

47. “Heros”(1977) -David Bowie

 デビッド・ボウイのベルリン3部作の2作目にあたるアルバムです。
前作のアルバムLowと比べると、さらにクラウトロックの影響を強く感じるアルバムで、前作から引き続きブライアン・イーノが参加し、さらに、ギターにロバート・フリップが参加しています。
 アルバムの構成としては、前半がロックぽいボーカル曲で、後半はインスト曲が中心となっています。
 聴いていて、前作のLowと比べると、この”Heros”は、ボーカル曲からインスト曲への展開がスムーズにつながっていて、全体的にも、完成度が高いアルバムです。
 前半の5曲に関して言えることは、完全なロックとクラウトロックとの融合を目指して作られた曲で、前作以上にブライアン・イーノのキーボード類がフィーチャーされていて、ロバート・フリップのギターも曲にいいアクセントをつけています。
 サンプルに使用されたことがある曲でもある3曲目のHerosは、ミディアムスローのナンバーで、デビッド・ボウイが熱唱しています。この曲は、当時、シングルとして発売されたのですが、評判がいまいちでしたが、時がたつにつれ、評価が高まり、デビッド・ボウイの代表曲ともいわれるようになりました。音楽というものは、その時の評価ですべてが決まるものではないということの例えでもあります。
 後半の5曲ですが、6曲目のV-2 Schneiderは、クラフトワークの影響を感じさせるインスト曲で、エレクトリックが中心ですが、どこか軽快感があります。
 7曲目のSense of Doubtは、タンジェリン・ドリームの影響を感じさせる曲で、アートなインスト曲です。
 8曲目のMoss Gardenは、デビッド・ボウイが琴を演奏しています。この曲は、日本風にも感じる美しいインスト曲です。
 9曲目のNeukolnも、タンジェリン・ドリームの影響を感じさせますが、デビッド・ボウイのサックスが独特で、オリジナリティーを感じさせます。
 10曲目のThe Secret Life of Arabiaは、ボーカル曲で、ファンキーでもあり、どことなく神秘的なイメージを感じさせる曲です。
 結論として、デビッド・ボウイのアルバム”Heros”はすべての曲が、当時としては、斬新であるにもかかわらず、非常に完成度が高いアルバムです。

 デビッド・ボウイの”Heros”というアルバムは、クラウトロックやエレクトリックの影響を強く受けているアルバムなので、クラウトロックの代表的なグループでもあるタンジェリン・ドリームのアルバムを1枚と、クラフトワークのアルバムを2枚紹介します。

48. The Virgin Years 1974-1978(2011) – Tangerine Dream

 1974年から1978年までにリリースされたPhaedra(1974),Rubycon(1975),Ricochet(1975),Stratosfear(1976),Cyclone(1978)という5つのアルバムに加えて、アルバム曲の別ヴァージョンも入れて1つにまとめたアルバムです。
 基本的には電子楽器を中心としたインスト曲なのですが、Cycloneだけはヴォーカルが入っています。
 サンプルに使用されたことがある主な曲は、Stratosfear(1976)に収録されている3AM at the Border of the Marsh From OkefenokeeとInvisible Limits、Stratosfearです。
 正直、5枚分を一気に聴くのは大変なので、1アルバムずつ聴くことをお勧めします。
 私の聴いた感想ですが、デビッド・ボウイの音楽性からすると、Phaedra(1974)がいちばん影響がある気がします。Stratosfear(1976)は、なぜかLowのインスト曲にも通ずるものがあります。
 私が一番印象に残ったアルバムは、ライブアルバムでもあるRicochet(1975)です。ライブならではの迫力があり、イヤホンで聴くよりオーディオルームで聴いてみたいサウンドです。クラウトロックはライブでもいいということがわかるアルバムです。

49. Autobahn(1974) – Kraftwerk

 1974年にリリースされたクラフトワークのアルバムです。
 サンプルに使用されたことがある曲でもある1曲目のAutobahnは、22分にも及ぶ曲です。当時の最先端の音楽楽器等を駆使したサウンドは、後の電子楽器の音楽にもつながるものです。エレクトリックな楽曲ですが、ソングライティングがよいのか聴きやすかったです。
 2曲目から4曲目も、1曲目からの流れから続くような曲で、エレクトリックミュージックそのものの楽曲です。
 最後の5曲目だけはフルートがフィーチャーされていて、少し趣が違うところが面白いです。
 個人的には、聴きやすいアルバムと思っていますので、クラフトワークのアルバムを初めて聴くならこのアルバムがおすすめです。

50. Trans-Europe Express(1977) – Kraftwerk

 1977年にリリースされたアルバムで、サンプルに使用された主な曲は、Trans-Europe Express、The Hall of Mirrors、Metal on Metalなどです。Autobahnと比べると、サウンド的には、エレクトリックミュージックというのは同じですが、ヴォーカル曲が少し多めにフィーチャーされているのが特徴です。
 私が聴いた感想では、Autobahn時と比べるとドラム・マシーンが進歩していて、リズムパターンが少し進化している気がするのと、電子楽器の音色に少しバリエーションが増えた気もします。
 Trans-Europe Experssの歌詞にデビッド・ボウイの名前が出てくることから、当時、交流があったことがうかがえます。
 

51. Scary Monsters(and Super Creeps)(1980) – David Bowie

 1980年にリリースされたアルバムで、Station to Stationとベルリン3部作で作られたサウンドをまとめてできた感じがするアルバムです。言葉で、まとめたと言っても、そう簡単なことではないのですが、しっかり、独自のサウンドになっていることは確かです。私としては、よくこういったものができたなあというのが率直な感想です。
 日本人が、このアルバムを初めて聴くと、1曲目のIt’s No Game(no.1)のイントロ部分で出てくる日本語のナレーションでまずびっくりするでしょう。実際、わたしもびっくりしました。この発想だけで、デビッド・ボウイはすごいなあとつくづく思いました。
 この1曲目を聴くとロバート・プリップのギターがかなりフィーチャーされていますが、アルバム全体を通しても、かなりフィーチャーされています。そのことから、ロック色の濃いアルバムとなっています。(このロバート・フリップのリードギターが曲にインパクトを与えるほどいいフレーズを弾いています。)
 サンプルに使用されたことがある曲は、4曲目のAshes to Ashesです。ピアノの音と、スラップベースが印象的な洒落た曲です。
 なお、このアルバムには、1曲だけカバー曲があり、それは、8曲目のKingdom Comeです。
 この曲はTom Verlaineが、パンクグループTelevision解散後に作ったソロ第一作であり、セルフタイトルのTom Verlaine(1979)に収録されているナンバーです。デビッド・ボウイの選曲の良さをうかがわせるナンバーでもあり、ここでは、ロバート・フリップのギターを生かしたスケール感がある曲に仕上がっています。曲の後半でデニス・デイヴィスが結構、派手にたたいています。
 このアルバムScary Monstersは、デビッド・ボウイならではのロックアルバムになっています。

 以上、アルバムStation to StationからScary Monsters(and Super Creeps)までが、デニス・デイヴィスが参加したデビッド・ボウイのアルバムとなります。

(つづく)

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