サンプルとして曲が使用されているミュージシャンのアルバムを紹介します。(PART 13)
今回は、前回の流れからデビッド・ボウイのアルバムLet’ Danceを紹介し、さらにNile RodgersとOmar Hakimが参加しているアルバムを紹介します。
52. Let’s Dance(1983) – David Bowie
前作のScary Monstersのレコーディングメンバーは起用せず、新たに選んだメンバーで作られたアルバムです。
プロデューサーには、デビッド・ボウイの他に、ナイル・ロジャースを起用しました。
デビッド・ボウイは、このレッツ・ダンスに関しては、商業的なものを意識したアルバムにするということを前提にしていたことから、ナイル・ロジャースを共同プロデューサーとして迎え入れたという狙いがあると思われます。
ただ、実際聴いてみると、確かに、以前のアルバムと比べると、そういった傾向にあるのは、間違いないのですが、かといって、一般的によくある単純な商業的なアルバムではありません。あくまでもデビッド・ボウイの基準では、商業的なアルバムというだけのことです。
参加ミュージシャンに関して、ドラムスには、オマー・ハキムを起用してます。これは、テクニック的にも納得がいく人選ですけど、面白いところでは、リード・ギターにStevie Ray Vaughanを起用したところです。この起用は、普通では考えられないような起用です。なぜなら、スティービー・レイ・ヴォーンはこの当時、いいギタリストではあるが、まだ無名でもあり、デビューもしていなかったからです。これは、すごい思い切った起用であり、これで、商業的なアルバムを作ろうというのがまた、面白いところです。
このアルバムの全体的な流れとしては、前半は商業的に意識した曲で、後半は、案外、意識していないような曲で展開しています。
サンプルで使用されたことがある曲は3曲目のLet’s Danceです。このLet’s Danceという曲は、原型は、フォークソングだったようですが、いろいろとアレンジして、ファンクっぽいダンスチューンに仕上げています。スティービー・レイ・ボーンのギターソロもアームを使ったりして、いいソロを弾いています。また、この曲では、3本のサックスが使われており、最後のほうで、うまく交えた演奏をしています。これも、また、おもしろいです。
2曲目のChina Girlは、イギー・ポップのアルバムThe Idiot(1977)に収録されている曲のカバーです。ここでは、ナイル・ロジャースが、いいリズムギターを弾いています。もちろん、レイ・ボーンのソロもいい味を出しています。
このレッツ・ダンスというアルバムには、もう1曲カバー曲があり、それは、6曲目のCriminal Worldという曲です。この曲は、ブリティッシュバンドMetroのアルバムMetro(1977)に収録されている曲です。オリジナルは、幻想的なロックナンバーで、Simon Philipsのドラムスが、後半、曲を盛り上げています。一方、デビッド・ボウイのヴァージョンは、ソウル風に仕上がっていて、こちらは、後半、スティービー・レイ・ボーンのギターソロが曲を盛り上げています。個人的には、もう少し、スティービー・レイ・ボーンのギターソロを長くしてもいいのではと思ってしまいますがどうでしょうかといったところです。
この次の7曲目のCat People(Putting Out Fire)も注目すべき曲です。この曲のオリジナルは、映画Cat Peopleの挿入歌で、Giorgio Moroderが作った曲にデビッド・ボウイが詩をつけてできた歌です。オリジナルのほうは、少しポップなロックという感じですが、デビッド・ボウイのヴォーカルはしっかりした歌唱になっています。ただ、デビッド・ボウイがこのオリジナルのヴァージョンに不満を持っていたため、アルバムLet’s Danceで再レコーディングして収録されました。
このレッツ・ダンスに収録されているCat People(Putting Out Fire)は、ボーカルにはいい意味で変化はありませんが、バックのサウンドは全く違うものとなっています。イントロはナイル・ロジャースのカッティングギターで始まり、ドラムのテンポもやや速めです。そして、注目すべきはスティービー・レイ・ボーンのギターソロが後半多くフィーチャーされていることです。これは、結構、聴きごたえがあるソロですので、レイ・ボーンファンは、ぜひ聴いてください。
このレッツ・ダンスというアルバムは、商業的でありながらも、デビッド・ボウイの個性は出ているアルバムだというのが私の感想です。
さて、次は、このアルバムのプロデューサーで、リズム・ギターを担当したナイル・ドジャースとドラムスのオマー・ハキムが一緒に参加しているアルバムを1枚紹介し、その次にオマー・ハキムが参加しているアルバムを1枚、ナイル・ロジャースが参加しているアルバムを1枚紹介します。
53. Random Access Memories(2013) – Daft Punk
2013年にリリースされたダフト・パンクの4枚目のアルバムです。
デビュー作から3作目までは、すべての曲でドラムマシーンやサンプリング等を駆使して曲を作っていましたが、このアルバムでは、ほとんどの曲でリズムギター、ベース、ドラムスはスタジオミュージシャンを起用して作っています。参加メンバーの主な名前を挙げると、リズムギターにNile RodgersとPaul Jackson.Jr. 、ベースにNathan East、ドラムスにJohn “JR” Robinson、Omar Hakimといったメンバーです。このメンバーから想像できるのは、Daft Punkが1970年代後半から1980年代前半のソウルミュージックに関してかなり詳しいということです。まさに、センスがいい人選です。
アルバムの1曲目のGive Life Back to Musicは、ナイル・ロジャースとポール・ジャクソン・ジュニアのツインリズムギターがさく裂したナンバーです。これは、リズムギターが好きな人にはたまらないナンバーです。
3曲目のGiorgio by Moroderは、この曲を作るにあたって、ジョルジオ・モロダーにインタビューし、この一部の音源を取り入れたナンバーです。後半から出てくる迫力十分なオマー・ハキムのドラムスが出てきて曲を盛り上げます。
8曲目のGet Luckyは、シングルカットされ大ヒットしたナンバーで、サンプルでも使用されたことがあるナンバーでもあります。この曲では、ナイル・ロジャースが、カッティングギターで持ち味を出しています。なお、このGet Luckyのドラムスは、オマー・ハキムが担当していて、デビッド・ボウイのレッツ・ダンスでも共演していた組み合わせになります。
アルバム全体としては、ヴォーカルは、Dust Punkのボコーダーと外部のシンガーを曲ごとに使い分け適用しています。それは、ドラムスにも同じことが言え、ジョン・ロビンソンとオマー・ハキムを曲ごとに使い分けています。
そう言った背景から、ごつごつしていなく、軽快に聴けるダンチューンが満載のアルバムになっています。
54. Brothers in Arms(1985) – Dire Straits
1985年にリリースされたダイアー・ストレイツの代表的なアルバムです。
このアルバムでは、2曲目のMoney For Nothingのイントロ部分を除いて、全曲オマー・ハキムはドラムスを演奏しています。
アルバム全体としては、Mark Knopflerのギターが中心にサウンドが作られています。静かにギターを聴かせる曲が多く収録されていて、渋く、味わいのあるアルバムです。そのため、オマー・ハキムのドラムプレイも地味ですが、テクニックだけでなく、こういったドラムスも演奏できるところに幅の広さを感じます。
サンプルに使用されたことがある曲は、2曲目のMoney For Nothingです。
この曲は、イントロが凝っていて、Stingのヴォーカルでスタートし、キーボードとドラムスの即興的な演奏の後にマーク・ノップラーのギターのリフから始まるシンプルなロックナンバーです。この曲の面白いところは歌詞にあります。ですので、この曲を聴く場合は、必ず歌詞のチェックが必要です。私も、対訳を通して、この曲の面白さを知りました。大まかな歌詞の内容は、電気店の定員さんが、MTVが放映されているテレビを見ていろいろと愚痴を言っているといったものですが、これがまた的を得ています。私としては、この歌の歌詞に関しては、傑作と言っても過言ではないと思います。
その他で、私が印象に残った曲としては、4曲目のYour Latest Trickです。この曲では、イントロで最初にRandy Breckerのトランペットソロがあり、その後にMichael Breckerの耳に残るサックスのフレーズが続きます。ロックにフュージョンの要素をうまく取り入れた曲で、こちらもいい曲です。
55. King Of The World(1980) – Sheila And B.Devotion
フランスの女性シンガーであるSheilaのグループ名義の形でリリースされたアルバムです。
このアルバムのプロデュースをしているのは、ナイル・ロジャースとバーナード・エドワーズの2人で、バックミュージシャンもChicのメンバーで固められています。
アルバム全体の作風としては、一言でいえば、当時のディスコ・ミュージックそのものです。
サンプルで使用されたことがある曲は、1曲目のSpacerです。
私としては、このSpacerという曲だけでも聴いてもらいたいです。なぜなら、この曲でのナイル・ロジャースのリズムギターは、正にリズムギターまるごとリフともいえる素晴らしいものだからです。本当にいいカッティングギターを弾いています。
2023年ナイル・ロジャースは、Le SserafimというグループのUnforgivenという曲に参加しています。(個人的には、ナイル・ロジャースのギターがあまり目立ってないことが残念に思います。いろいろな考えがあるのは仕方ないことですが、できれば、しっかりと使ってほしかったです。)
私の考えでは、もしかしたら、この参加の原点が、Sheilaのアルバム制作の参加であったかもしれません。因みに、Sheilaは、2023年現在も現役で、ライブでもヴォーカルを披露しています。
(つづく)