サンプルとして曲が使われているミュージシャンのアルバムを紹介します。(PART 15)
今回は、ナイル・ロジャースとバーナード・エドワーズがプロデュースした代表的なアルバムでもあるダイアナ・ロスのアルバムDianaを取り上げ、この後に、ダイアナ・ロスの数あるアルバムの中から3枚を取り上げます。
60. Diana(1980) – Diana Ross
ダイアナ・ロスが1980年5月にリリースしたアルバムです。
アルバムのプロデュースとソングライターにナイル・ロジャースとバーナード・エドワーズを迎え、バックの演奏もシックのメンバーが参加しています。
レコーディングは、調べたところによりますと1979年12月から1980年の3月まで行われました。なぜ、レコーディングの年月を記した方いえば、1979年7月12日にDisco Demolition Nightという反ディスコ運動がシカゴで行われました。そして、この運動がきっかけで、ディスコ・ミュージックは逆風にさらされ徐々に下火となっていきました。
つまり、ダイアナ・ロスのアルバムDianaはそんな転換点の時に製作されたアルバムなのです。
ダイアナ・ロスとしては、新しいチャレンジとして全体的にディスコミュージックを本格的に取り入れようと、シックのメンバーと一緒にアルバムを作ったのですが、この反ディスコが方向性に問題を与えます。
この問題を解決するために、ダイアナ・ロスは、ディスコ・ミュージック色を少しでも無くしたいがために、ナイル・ロジャースとバーナード・エドワーズの承諾を得ず、別の人に頼んで、無断でアルバムのリミックスをしてしまうのです。
こうしてできたアルバムDianaですが、ふたを開けると、大ヒットアルバムになりました。
サウンド的には、ディスコミュージックぽいのですが、私が聴いた感想としては、完全なディスコ・ミュージックではなく、ソウル・ミュージックをディスコ風にした音楽だと思いました。
実際、聴いてみて、このアルバムで、ナイル・ロジャースとバーナード・エドワーズは、完全なディスコ・ミュージックを目指してはなかったのではないかと思いました。それは、トニー・トンプソンのドラムが、ディスコミュージックにしては単純なものではなく、結構凝ったものとなっているからです。私としては、このアルバムのポイントは、トニー・トンプソンのドラムにあると思っています。
サンプルに使用されたことがある主な曲は、1曲目のUpside Down、4曲目のI’m Coming Outなどです。
特に、I’m Coming Outという曲は、2022年12月に行われた世界のダンスバトルの大会で優勝した日本人ダンサーが、I’m Coming Outの曲に合わせてダンスしている動画が話題になりました。つまり、この曲は、世代を超えて聴かれている曲でもあります。
アルバムDIanaは、最初から最後まで軽快に聴けるアルバムです。
61. Diana Ross(1976) – Diana Ross
1976年にリリースされたダイアナ・ロスの2度目のセルフタイトルのアルバムです。というのは、ダイアナ・ロスは、1970年にもセルフタイトルのアルバムを出していますので、2度目のセルフタイトルのアルバムとなります。
このアルバムでは、いろいろなダイアナ・ロスのヴォーカルスタイルを楽しむことができます。
1曲目のTheme from Mahogany(Do You Know Where You’re Going To)はサンプルに使用されたことがある曲です。スローバラードで、オーケストラをバックにしっとりと歌っています。以前、コーヒーのCMでも使われていた曲ですので、この曲を聴きながら、ゆったりとコーヒーでも飲みたくなるような曲でもあります。
この1曲目と、これもサンプルとして使用されたことがある2曲目のI Thought It Took a Little Time(But Today I Fell in Love)と、8曲目のAfter Meは、マイケル・マッサーが曲作りとプロデュースに参加しています。
マイケル・マッサーは、ホイットニー・ヒューストンのSaving All My Love for YouやDidn’t We Almost Have It Allなど、バラード系の曲作りやプロデュースに参加していたので、ホイットニー・ヒューストンのバラードの曲が気に入っている方は、ぜひ聴いていただければと思います。
3曲目のLove Hangoverもサンプルによく使用されている曲です。
この曲は、最初はスローテンポの曲ですが、後半、テンポが速くなり、ディスコ調の曲になるというよくできた曲です。
なお。この曲では、エレクトリックピアノでジョー・サンプルが参加しています。本当によく働く人だと思いました。
この他にも、ソウル風な曲やジャズ、R&B風な曲といろいろとあり、それぞれで、ダイアナ・ロスのヴォーカルを楽しむことができます。
思った以上に完成度が高いアルバムだと私は思いました。
62. The Boss – Diana Ross
1979年にリリースされたアルバムです。
このアルバムでは、Ashford & Simpsonが曲作りとプロデュースをしています。
アルバムのサウンドは、ソウルミュージックが中心です。The Bossみたいなディスコ風の曲もありますが、アッシュフォード&シンプソンのプロデュースですので、あくまでもソウルフィーリングを生かしたナンバーになっています。
また、このアルバムでは、全曲ホーンセクションとストリングスが入っていて、このストリングスのアレンジやホーンの音もよく、そのおかげで、ダイアナ・ロスのヴォーカルもさらに引き立っていて、全体的にうまく調和されています。
サンプルに使用されたことがある曲は、1曲目のNo One Gets the Prize、4曲目のThe Bossと6曲目のIt’s My Houseです。
このアルバムThe Bossは、派手さはないかもしれませんが、1曲1曲がしっかりと丁寧に作られた良いアルバムです。
63. Swept Away – Diana Ross(1984)
1984年にリリースされたアルバムです。
1980年代になると、音楽のレコーディングにヤマハやローランドのシンセサイザーが頻繁に使われるようになります。そんな背景もあって、ダイアナ・ロスのこのアルバムでは、大胆にシンセサイザーを使ったサウンドになっています。
サウンド的には、バラードの他、ロックっぽい曲や、80年代のソウルミュージック風な曲、ニューウエイブみたいな曲などバラエティ豊かです。
サンプルに使用されたことがある曲は、ライオネル・リッチーが作った1曲目のI Miss Youと、4曲目のIt’s Your Move、フリオ・イグレシアスとのデュエット曲で8曲目のAll of Youなどです。
私が、このアルバムで注目したのは、Jeff Beckが参加している点です。
分かっているところでは、ジェフ・ベックは、5曲目のSwept Awayと10曲目のボブ・ディランのカバーであるForever Youngで主にギターソロを弾いています。(私の聴いた感じでは、It’s Your Moveもジェフ・ベックのソロのように聴こえるのですが、誰なのかは、正確には分かりません)。
ダイアナ・ロスとジェフ・ベックという組み合わせ自体、意外性があるもので、どうなのかと思いましたが、心配無用で、特に5曲目のSwept Awayに関しては、かっこいいギターソロを弾いています。なお。このSwept Awayという曲は、ダリル・ホールが曲作りに参加していて、バックヴォーカルもしています。
この他では、3曲目のRescue Meという曲なのですが、この曲は、Fontella Bassの1965年のヒットナンバーのカバーです。いかにも、ダイアナ・ロスらしいカバーで、原曲と違ってリズムギターがフィーチャーされていて新鮮味を感じます。なお、この曲でのリズムギターは、私が聴いた限りでは、おそらくナイル・ロジャースではないかと思われます。
それと、このアルバムでは、Dave Wecklが何曲かドラムスを演奏しています。ジャズ・フュージョン界では、かなりのテクニシャンとして有名な方です。ソロ・アルバムも出していますので、気になる方はサブスクで聴いてみてください。
さらに付け足すと、バーナード・エドワーズが、6曲目のTelephoneという曲を共作しています。この曲も少しサンプルで使われています。
このアルバムSwept Awayは、ダイアナ・ロスが新しいものにトライしたアルバムと言っていいかもしれません。