サンプルとして曲が使われているミュージシャンのアルバムを紹介します。(Part2)
パート2では、マイゼル兄弟(MiZell Brothers)がプロデュースしたアルバムから紹介します。
前回、紹介したルー・ドナルドソンのアルバムはBlue Noteからリリースされていますので、まず最初に、Blue NoteからリリースされているDonald ByrdのアルバムPlaces and Spaces(1975)から紹介します。
5. Places and Spaces(1975) – Donald Byrd
サンプルとしてよく使われることで知られているドナルド・バードがブルーノートから出したアルバムです。正直、ドナルド・バードのトランペットよりマイゼル兄弟(プロデューサーのクレジットはLarry Mizell)のプロデュースやソングライティングの良さが光るアルバムです。
サンプルとして主に使われた曲は、Wind Parade,(Fallin’ Like)Dominoes,Change(Makes You Wanna Hustle)などです。
アルバムの内容としては、マイゼル兄弟のプロデュース色が濃く、ドナルド・バードのトランペットは、マイゼル兄弟が作り上げたサウンドに後から加えて仕上げた感じに聴こえます。ジャズファンクなのですが、曲によってはストリングスなども入っていて洗練されたサウンドになっています。間違いなくマイゼル兄弟のプロデュース作品の中では完成度の高い作品です。あえてマイゼル兄弟に大部分のサウンドのプロデュースを任せたのは、ドナルドバードとの信頼関係と理解があってこそのものだと私は思いました。
ベースはChuck Rainey、ドラムはHarvey Masonです。
6. Stepping Into Tomorrow(1975) – Donald Byrd
もう1枚、ドナルド・バードのStepping Into Tomorrowというアルバムを取り上げます。プロデュースやアレンジはマイゼル兄弟です。このStepping Into Tomorrowというアルバムは、Places and Spacesというアルバムの前に出たものです。このアルバムの特徴は2つあり、1つは、ゲーリーバーツ(Gary Bartz)のサックスが入っていること。もう一つは女性ボーカルが入っていることです。そのせいか、都会的な感じがします。曲のアレンジも割と凝っていて今聞いても新鮮です。マイゼル兄弟のボーカルに関していえば、このアルバムが一番いい感じに聴こえます。
ベースはChuck Rainey、ドラムはHarvey Masonです。このアルバムでもいい演奏をしています。
サンプリングに使われている代表曲は、4曲目のThink Twiceです。実は、この曲がドナルド・バードの曲の中で、いちばんサンプリングに使われている曲です。
ドナルド・バードは、他にもマイゼル兄弟のプロデュース作品がありますが、ドナルド・バードのトランペットとバンドがかみ合っている作品はBlack Byrd(1973)です。フルートもフィチャーされていますが、トランペットのソロも効果的に入っています。グルーブ感も洗練されていなく、まさに正統派ジャズファンクの音です。Black Byrdをドナルドバードの代表作という人も結構いますので、興味のある方はぜひ聴いてください。
7. Blacks and Blues(1974) – Bobbi Humphey
ドナルド・バードのBlack Byrdを聴いて、マイゼル兄弟にプロデュースを頼んだとされるフルート奏者のボビー・ハンフリー(Bobbi Humphey)のアルバムです。
このアルバムも、ジャズファンクが土台となっていて、そこにマイゼル兄弟のボーカルなどが入って、マイゼル兄弟のサウンドになっていますが、ボビー・ハンフリーのフルートやボーカルも結構フィーチャーされていますので、バランスが取れた内容になっています。1曲目のイントロでギロが使われているというのはある意味マイゼル兄弟の好みかもしれません。マイゼル兄弟は、よくパーカッションを効果的に使っています。
主にサンプルに使われた曲はBlack and Blues,Harlem River Drive,Just a Love Childです。
このアルバムも、ベースはChuck Rainey、ドラムはHarvey Masonです。安定感があります。
8. Gears(1975) – Johnny Hammond
オルガン奏者のジョニー・ハモンドが、1975年に出したアルバムです。このアルバムもプロデュースはマイゼル兄弟です。
このアルバムでも、ベースはChuck Rainey、ドラムはHarvery Masonです。
このアルバムも、マイゼル兄弟のボーカルが入っていて、マイゼル兄弟色の出たサウンドが基礎になっています。
ジョニー・ハモンドのオルガンやエレキピアノはやや控えめな印象ですが、それなりにソロを弾いています。ただ、チャック・レイニーとハービー・メイソンのドラムが結構前面に出ていて、グルーブ感があります。
サンプルに使われた曲はアルバムに収録されている全6曲すべてですが、特に使われている曲は5曲目のShifting Gearsです。このShifting Gearsのチャック・レイニーのベースとハービー・メイソンのドラムのグルーブ感は、さすがの一言です。
それと2曲目のLos Conquistadores Chocolatesという曲もサンプルによく使われていて、この曲でのハービー・メイソンのドラムは、アグレッシブで印象に残ります。
マイゼル兄弟プロデュースのアルバムを聴いて気付いたことは、マイゼル兄弟の作るサウンドにはチャックレイニーのベースとハービーメイソンのドラムというケースが多いことです。あくまでも私見ですが、この2人のベースとドラムが一番理想に近いグルーブを得ることができると考えたと思います。もちろん、マイゼル兄弟のソングライティングとかプロデュース力もありますが、私自身の感想としては、このリズムセクションが生み出すグルーブがいちばん印象に残りました。
(つづく)