サンプルとして曲が使われているミュージシャンのアルバムを紹介します。(Part3)
前回取り上げたジョニー・ハモンドはジャズオルガン奏者ですが、その中でも、第一人者とされているのがジミー・スミスです。そこで、今回はジミー・スミスを取り上げます。
9. Black Smith(1974) – Jimmy Smith
1974年に発表されたジミー・スミスのアルバムです。完全なインスト物が3曲とボーカルが入っている曲が6曲で、ジャズファンクや、ボーカル物のソウルミュージックをライブ感覚で演奏しています。私が、このアルバムの中で、ジミー・スミスが演奏するオルガンで印象に残っている曲は、7曲目のPipelineです。Pipelineはベンチャーズでおなじみの曲ですが、ここではドラムのリズムの取り方を変えることで、ためみたいなものができ、グルーブ感も出て、結果的にジャズファンクに近い形に仕上がっています。
このアルバムに参加しているドラムスとベースの方はクレジットがないので誰だかわかりませんが、なかなかの腕達者な方だと思います。女性ボーカル陣も息の合った歌唱をしています。男性のリードボーカルも、クレジットがないのでわかりませんが、声的には、もしかしたらジミー・スミス本人かもしれません。
あくまでも私の感想ですが、録音のやり方やミックスがやや粗削りのように聴こえました。(もしかしたら、意図的なものなのかもしれません)。ただ、この点を除けば、グルーブ感もあり、ジミー・スミスのオルガンソロもいいので、近年、再評価されているのもうなずける内容です。
サンプルとして使用された曲は、2曲目のI’m Gonna Love You Just a Little Bit More Babyという曲です。イントロのドラムがばっちり決まっています。この曲が、ジミー・スミスの曲の中でいちばん多くサンプルに使用されている曲です。
また、このアルバムでは、ベースとドラムがいい演奏をしていますので、リズムセクションに興味がある方は必聴です。
10. Root Down(1972) – Jimmy Smith
1972年に発表されたジミー・スミスのライブアルバムです。
参加メンバーは、ジミー・スミスのオルガンの他、ドラムスがPaul Humphrey、ベースがWilton Felder、ギターがArthur Adams、パーカッションがBuck Clark、ハーモニカがSteve Wiliamsです。
演奏に関しては、本当にバンド全体に一体感を感じ、臨場感ある演奏になっています。
内容としては、すべての曲がジャズファンクというのではなく、ブルース的な曲やフュージョン的な曲などよく聴くといろいろです。
以下、主な曲の紹介。
1曲目のSagg Shootin’ His Arrowのイントロで聴こえるヴィブラスラップの音から何か熱気を感じます。ワウペダルのギターもあり、激しいジャズファンクの曲はオープニングにふさわしいです。
2曲目のFor Everyone Under the Sunは、ゆったりとしたソウル調の曲。
3曲目のAfter Hoursはブルースぽい内容で、ブルースフィーリングが前面にでているギターソロは聴きどころの一つです。
4曲目は、Root Down and Get Itです。サンプルで使用されたことがあるこの曲は、ファンク色が濃い曲です。
5曲目のLet’s Stay Toghtherは、アル・グリーン(Al Green)の代表曲であり、ジミー・スミスが弾くオルガンも原曲をあまり崩さず、丁寧に弾いています。オリジナルの曲のほうも聴いたことがない方はぜひ聴いてほしい曲です。
6曲目のSlow Down Saggは、フュージョン的な曲です。途中でヴィブラスラップが鳴って、お客さんが盛り上がるのは、私自身、面白く感じました。
(つづく)
<コーヒーブレイク>
ところで、ジミー・スミスは多くのギタープレイヤーと共演しています。主な名前を挙げますと、ウェス・モンゴメリー、ケニーバレル、グラント・グリーン、ジョージ・ベンソンなどです。そういった背景から、ここは、一度サンプルの使用の有無から1回離れて、ジミー・スミスのリーダーアルバムから、ウェス・モンゴメリーとケニー・バレルとの共演アルバムを紹介します。
●Jimmy & Wes The Dynamic Duo(1966) – Jimmy Smith,Wes Montgomery
ジミー・スミスとウェス・モンゴメリーが共演したアルバムです。2人の 豪快な食べっぷりの写真がアルバムジャケットになっていますが、そのアルバムジャケット通りに、ダイナミックで軽快な演奏をしています。
ジミー・スミスのオルガンは、ソロでは結構、速弾きなどをしていますが、持ち味もしっかり出しています。一方、ウェス・モンゴメリーのギターソロも、オクターブ奏法を軸に軽快に弾いています。両方の演奏の掛け合いがあったり、ユニゾンみたいなものもあり、存分に楽しんで演奏している様子がうかがえます。
さらに、両者の間にオリバー・ネルソンがアレンジをしたビッグバンドの音がアクセントとなり、2人の演奏を盛り上げています。
ところで、ジミー・スミスが、一番多く共演しているギタリストは誰でしょうか。それは、ケニー・バレルです。
●Home Cookin’ (1959) – Jimmy Smith
ジミー・スミスとケニー・バレルが共演しているアルバムは、The sermon!(1958)、Midnight Special(1961)、The Cat(1964)など、ジミー・スミスの代表作となるアルバムもありますが、その中でも、両者のソロの割合が均等なものがいいと思い、ここでHome Cookin'(1959)を取り上げます。
このアルバムでは、タイトル通り、家庭料理を作っている感じで演奏をしています。See See RiderやI Got a Womanといったブルースナンバーをカバーしていて、ブルースフィーリングもありながらも、メンバーの調和が取れていて、シンプルなオルガンジャズになっています。
このアルバムでのジミー・スミスのオルガンは、ジミー・スミスらしいオルガンで、いいフィーリングで弾いています。ケニー・バレルのギターも、抑え気味ではなく、ケニー・バレル調で弾いています。パーシー・フランス(Percy France)のサックスは、ゆったりとしていますが、ブルース色があるこのアルバムでは、合っている感じです。
ホーム・クッキンは、ジミー・スミスのアルバムですが、全体的にも、ドラムを除く各楽器のソロの割合もちょうどよく、リラックスして聴くことができるアルバムです。
因みに、ケニー・バレルとパージー・フランスは、フレディー・ローチ(Freddie Roach)のアルバムDown To Earth(1962)で共演しています。こちらもいいアルバムなので興味がある方は聴いてみてください。