サンプルとして曲が使われているミュージシャンのアルバムを紹介します。(Part 4)
今回は、Part3でジミー・スミスのRoot Downというアルバムを取り上げましたので、その続きとして、Root Downに参加したミュージシャンのうち、ジミー・スミス以外のミュージシャン、Paul Humphrey,Wilton Felder,Auther Adams,Buck Clarkの4人のうち誰かが参加しているアルバムから取り上げました。
11. Layers(1973) – Les McCann
1973年にリリースされたこのアルバムで、Root Downに参加したミュージシャンでは、パーカッションのバック・クラークが参加しています。全体的に、本格的なジャズファンクの曲は、2曲しかなく、後は、どちらかというとニューエイジミュージック的な曲でまとめられています。
このアルバムで主にサンプルに使用されている曲は、Harlem Buck Strut DanceとSometimes I Cryなどで、他にも数曲が使用されています。
1曲目のSometimes I Cryは、ドラムがリズムを刻み、パーカッションが入り、その後キーボード類が入ってきて、ニューエイジミュージックみたいな感じの曲になります。こういった曲もサンプルで使用されるというのは意外でした。
このアルバムでは、Harlem Buck Strut Danceと、Dunbar High School Marching Bandの2曲だけが、サイケデリックな感じがするジャズファンクの曲で。当然ドラムとベースははっきりしていますが、他の曲に関しては、ドラムとベースは、地味で、何層かに重ねたキーボード類とパーカッションで構成されています。
改めて、私が、Layersを聴いた感想としては、よく聴けばジャズファンクなのかもしれませんが、ジャズファンクというよりは、ニューエイジミュージック風ジャズファンクのように聴こえました。なかなか良いアルバムです。
12.$ (Dollars) (Soundtrack) (1972) – Quincy Jones
1971年に公開された映画Dollarsのオリジナルサンドトラックです。Root Downに参加したミュージシャンから、このアルバムに参加したのは、ギターのArther AdamsとドラムスのPaul Humphreyです。
ダラーズのサウンドトラックは、クインシー・ジョーンズの作品らしく、多くのミュージシャンを曲ごとにセレクトして、かなりこだわったアルバムになっています。
サウンドトラックの楽しみ方としては、「この曲はあの場面で流れていた」とか、「あの曲はエンディングテーマだった」とかというように、映画を見た後に聴くのがいちばんだと思いますので、映画を見ていない私には、ピンとこないところがあるのは事実です。ただ、サウンドトラックを聴いて映画の雰囲気というものは何となく伝わります。
ダラーズは、サウンドトラックですが、結構、サンプルに使用された曲があります。一番よく使われている曲は、Kitty With the Bent Frameで、そのほかに、Snow Creatures、Candy Man、Money Runner、Brooks’ 50c Tourなどです。どの曲も、映画を意識して作られた曲になっています。
このアルバムでは、リトル・リチャードやロバータ・フラックのボーカルが聴けるほか、9曲目のCandy Manではいいジャズギターのソロがあり、10曲目のPassin’ the Buckという曲では、ブルース調の短い曲ではありますが、味のあるギターが聴けます。
あくまでも、ダラーズは、サウンドトラックでありますが、丁寧に作られたアルバムです。映画音楽やサンプリングに興味のある方は聴いてみてください。
13. Merry Clayton(1971) – Merry Clayton
1971年に発表されたメリー・クレイトンのアルバムです。Root Downに参加しているメンバーでは、ベースのWilton FelderとドラムスのPaul Humphreyです。
メリー・クレイトンと言えば、ローリングストーンズのLet It Bleed(1969)に収録されているGimmie Shelterでのボーカルが有名ですが、このアルバムも、なかなかの出来です。
サンプルに使用されている曲は、1曲目のSouthern Manです。この曲はNeil YoungのアルバムAfter The Gold Rush(1970)に収録されているナンバーです。オリジナルはロックナンバーですが、ここではメリー・クレイトンのボーカルを前面に出すことによって迫力あるソウルナンバーとなっています。
話はそれましたが、このアルバムの内容ですが、1曲目から最後の曲まで、メリー・クレイトンのソウルフルなボーカルが中心に作られています。バックは、Wilton Felderのベース、Paul Humphreyのドラム、David T.Walkerのギター、Billy PrestonやJoe Sample他のピアノやキーボードなどで構成されています。(いいメンバーです)。このバックバンドは、このアルバムでは、無駄なことは一切せず、メリー・クレイトンのボーカルを立てることに専念した演奏になっています。
なお、このアルバムでは、Carole Kingが曲を3曲提供していて、アレンジやバックボーカル、キーボードなどもしています。メリー・クレイトンは、キャロル・キングの代表作でもあるTapestry(1971)にバックボーカルで参加していて、その関係から、キャロル・キングは、曲を提供していたと思われます。
その他には、レオン・ラッセルのA Song For Youをカバーしています。この曲が収録されているアルバムLeon Russell(1970)にもメリー・クレイトンはバックボーカルとして参加しています。私としては、このことが、この曲をカバーしたきっかけになったと考えています。
いろいろと書きましたが、アルバムMerry Claytonは最初から最後まで、メリー・クレイトンのボーカルが楽しめるアルバムです
14. Street life(1979) – The Crusaders
Root Downのアルバムには、Wilton Felderが参加していますので、The Crusadersのアルバムの中から1979年のアルバムStreet Lifeを取り上げます。なおこのアルバムにはArther Adamsも参加しています。
このアルバムの中で、この曲だけは聴いてほしいという曲が1曲あり、それは、アルバムのタイトルにもなっている1曲目のStreet Lifeという曲です。この曲が、The Crusadersの曲の中で、いちばんサンプルに使用されている曲です。
このStreet Lifeという11分にも及ぶ曲は、クルセイダースのとって初めてのボーカルが入っている曲です。
この曲でリードボーカルを取っているランディ・クロフォードのボーカルは素晴らしいものですが、この曲の歌詞もまたいい歌詞です。
私は、英語がわからないので、この歌詞を完全に理解するのは無理がありますが、この歌詞を書いた作者は、大変よくストリートの描写ができているなあというのはわかりました。
私自身、歌詞に出てくるI play the street lifeという言葉から、ストリートではいろいろなことが起こるというのは想像できました。いろいろな人がいるから、いろいろなスタイルに遭遇する。いいこともあれば悪いこともある。ストリートライフでは、いろいろなことが起こる。あくまでも私自身の解釈ですが、歌詞から、ストリートライフの1場面1場面が思い浮かびます。私としては、この歌詞は、意味を理解するというよりは、歌詞からストリートライフというものを想像することで理解するのがいちばんだと思いました。それは、言葉にはできない何かを感じさせる歌詞でもあります。余談ですが、最近、日本の歌には、こういった日常を描写する歌詞がない気がしますので、出てくればおもしろいとも思いました。
このアルバムの内容ですが、全体的に洗練されていて、時期的なものなのかもしれませんが、スムースジャズに近いというのが、私が聴いた感想です。
なお、2曲目のMy Ladyもサンプルでよく使用されている曲です。
私が印象に残っている曲は、1曲目のストリートライフなのですが、他では6曲目のNight Faceです。この曲でベースを弾いているのがAlphonso Johnsonで、元ウェザーリポートのメンバーです。ですので、私自身、どこか、ウェザーリポートの雰囲気を感じた曲でもありました。
今回、ジミー・スミスのRoot Downに参加したミュージシャンから取り上げたのですが、やはり、みんないいミュージシャンであることがわかりました。
(つづく)