サンプルとして曲が使われているミュージシャンのアルバムを紹介します。(Part8)
今回は、ロイ・エアーズのアルバムを紹介します。前回に続きヴィブラフォン奏者のアルバムを紹介するのですが、ロイ・エアーズは、ジャズという音楽だけでなく、ソウル・ミュージックにも足を踏み入れた作品も作ってきました。また、サンプルに使用された回数も多く、現代においてもヒップホップというジャンルに影響を与えています。
そこで、今回はロイ・エアーズ・ユビキティのアルバムの中から、ソウル・ミュージックのアルバム2枚と、ヴィブラフォン奏者としてのアルバム2枚を紹介します。
まずは、ソウル・ミュージシャンとして、ロイ・エアーズ・ユビキティのアルバムを2枚紹介します。
28. Everybody Loves the Sunshine (1976) – Roy Ayers Ubiquity
ロイエアーズの曲の中でいちばんサンプルに使われた曲であり、また、アルバムのタイトルにもなっているEverybody Loves the Sunshineが収録されているアルバムです。
このアルバムで、ロイ・エアーズはヴィブラフォン以外にもボーカル、ピアノ、シンセサイザー、さらにはソングライティング、アレンジ、プロデュースなど幅広く制作に携わっています。
このアルバムでは、ロイ・エアーズのヴィブラフォンは少なめで、その代わり、ロイ・エアーズのボーカルや女性ボーカルがフィーチャーされています。
サウンドは、いろいろなというより、すべてのソウル・ミュージックの要素やラテン音楽などを取り入れて、独特なグルーブを作り出していて、また、これが、このアルバムの聴きどころでもあります。一見、聴くと雑に作られている感じに聴こえますが、よく聴くとしっかり作られています。
一番の注目点は、やはり、Everybody Loves the Sunshineなのですが、曲調はメロウなソウルナンバーです。この曲を聴いて私は、もしかしたら、Every Body Loves the Sunshineという曲が多くサンプリングに使用されているのは、演奏面だけでなく、歌詞にもあるのではと思いました。シンプルな歌詞なのですが、どこか生活感がある歌詞かもしれません。
その他で、私が注目した点は、Gino Vannelliのアルバム Storm at Sunup(1975)に収録されているKeep On Runningという曲をカバーしていることです。これは、意外というしかないかもしれません。ただ、ジノ・ヴァレリのアルバムを聴くと、ロイ・エアーズは、ジノ・ヴァレリの音楽からも少し影響を受けているかもしれません。
ロイ・エアーズ・ユビキティはこのアルバム以降、Vibration(1976)、Lifeline(1977)とソウルミュージック色の濃いアルバムを作っていきます。これらのアルバムからもサンプルとして使われた曲がありますので、興味がある方は聴いてください。
29. Mystic Voyage(1975) – Roy Ayers Ubiquity
Everybody Loves the Sunshineの前の前に作られたアルバムです。私としては、このアルバムから本格的にヴォーカルを中心としたソウルミュージック色が濃いアルバムを作ってきたと思いました。
アルバム全体のサウンドは、(ジャズ)ファンクが中心になっていて、そこに、ロイ・エアーズのヴィブラフォンの演奏によるインストや、Ashford and SimpsonのカバーであるスローバラードのTake All the Time You Needなどのボーカル曲などがあります。
サンプルとして使用されたことがある曲は、1曲目のBrother Green(The Disco King)と2曲目のMystic Voyageです。実は、私が印象に残っている曲もこの2曲です。
Brother Green(The Disco King)は、ノリのいいファンクな曲で、ロイ・エアーズのクラビネットが曲を盛り上げています。
Mystic Voyageはメロウなインストナンバーで、ロイ・エアーズのメロディアスなヴィブラフォンの演奏が楽しめます。
なお、このアルバムでドラムを演奏しているのはRicky Lawsonです。実は、リッキー・ローソンという名前を知らなくても、リッキー・ローソンのドラム演奏を聴いたことがある人はたくさんいると思います。それは、なぜかと言いますと、リッキー・ローソンは、ホイットニー・ヒューストンの名曲 I Will Always Love Youでドラムを演奏しているからです。
話がそれましたが、このMystic Voyageというアルバムは、前作よりボーカルが多くなっていますが、オーソドックスな(ジャズ)ファンクのサウンドでありますので、割と聴きやすいアルバムだと私は思いました。
次は、ヴィブラフォン奏者としての、ロイ・エアーズ・ユビキティのアルバムを2枚紹介します。
30. Change Up the Groove(1974) – Roy Ayers Ubiquity
このアルバムで、主にサンプルに使用されたことがある曲は、8曲目のThe Boogie Back、2曲目のSensitizeです。
ロイ・エアーズのヴィブラフォンの演奏も、8曲中7曲入っていて、メロディアスでありながらテクニックもあるヴィブラフォンの演奏を披露してます。
このアルバムの主な参加ミュージシャンとして、ドラムでBernard Purdie、ベースにWilbur Bascomb Jr.などが参加しているので、正確なリズムとグルーブ感があふれる演奏になっていて、また、これが1つの聴きどころでもあります。
私が、印象に残った曲としては、3曲目のDon’t You Worry ‘bout a Thing(歌詞がいいです。)という曲です。この曲は、Stevie Wonderの曲のカバーで、アルバムInnervisions(1973)に収録されています。この曲での、ベースとドラムが醸し出すグルーブというのがとても良いです。ロイ・エアーズのビブラフォンは、最初は、メロディがはっきりしていて、メロディアスなのですが、曲の後半から、テクニカルなフレーズも出て曲を盛り上げています。
この他の曲では、Roberta Flackの1974年のヒット曲Feel Like Makin’ Loveのカバーや映画音楽のカバー、オリジナルの曲などですが、アルバム全体を通して言えることは、このアルバムの中心はロイ・エアーズのヴィブラフォンであることは間違いないです。ですので、ロイ・エアーズのヴィブラフォンに興味のある方は、まず最初にこのアルバムから聴くことを私はおすすめします。
31. Red Black & Green(1973) – Roy Ayers Ubiquity
ロイ・エアーズ・ユビキティが1973年にリリースしたアルバムです。
収録曲数は全部で7曲です。サンプルに使用されたことがある曲は、4曲目のRed Black & Greenです。
アルバム全体のサウンドは、ストリングスを生かした力強いジャズファンクとなっています。聴き方によってはロックにも通じるところがあるかもしれません。
ロイ・エアーズのヴィブラフォンの演奏は、2曲目のボーカル曲以外、全部入っています。
その中でも、1番の演奏は、1曲目のAin’t No Sunshineです。この曲は、Bill WithersのアルバムJust As I Am(1971)に収録されている曲のカバーですが、 オリジナルの雰囲気はあまりなく、ロイ・エアーズがいい意味でヴィブラフォンをたたきまくっています。私としては、(ロイ・エアーズのアルバムを全部聴いていませんが)、多分、ロイ・エアーズのヴィブラフォン演奏の代表曲の1つだと思います。
2曲目のHence Forthは、ヴォーカルをフィーチャーしたサイケデリックなソウル曲。
3曲目のDay Dreamingは、Aretha FranklinのYoung, Gifted and Black(1972)に収録されている曲のカバーです。この曲は、女性ボーカリストによくカバーされている曲です。このアルバムでは、オリジナルをあまり崩さずにカバーしています。ロイ・エアーズのヴィブラフォンは、メロウというかトロピカルな感じもしていい演奏です。
サンプルに使用されたことがある4曲目のRed Black &Greenは、ジャズファンクなのですが、私としては、どこかジミ・ヘンドリクスを思い起こすような感じもする曲でもあります。
5曲目のCocoa Butterは、ロイ・エアーズ自身が作ったインスト曲です。ここでは、ロイ・エアーズのグルーブ感あふれるヴィブラフォンの演奏が楽しめます。
6曲目のRhtthms of Your Mindは、このアルバムでドラムスを担当しているDennis Davisの作った曲。個性的なジャズファンクの曲です。
最後7曲目のPapa Was a Rolling Stoneは、Norman WhitfieldとBarrett Strongの作品で、the Temptationsのバージョン(All Directions(1972)に収録)が有名です。
テンプテーションズのフルバージョンは11分にも及びますが、ロイ・エアーズのカバーは、オリジナルの雰囲気を残しつつ、約5分30秒でまとめられています。ロイ・エアーズのヴィブラフォンの演奏も熱のこもったものとなっていて聴きごたえ十分です。
(つづく)